人工股関節手術(THA)を受けられる患者さんから、
「正座はできますか?」
「一生正座は禁止ですか?」
という質問をよくいただきます。
特に日本では、
- 法事
- お寺や神社
- 茶道
- 和室での生活
など、正座が必要になる場面があります。
そのため、正座ができなくなることを心配される方は少なくありません。
結論から言うと、
人工股関節手術後でも正座は可能です。
実際に当院では、正座を禁止していません。
この記事でわかること
- 人工股関節手術後に正座はできるのか
- 昔と現在で考え方が違う理由
- 正座が難しい人の特徴
- 当院の考え方
- 正座以外の日常生活について
人工股関節手術後でも正座は可能です
まず最も大切なことは、
人工股関節が入っているから正座できないわけではない
ということです。
患者さんの中には、
「人工関節を入れたら一生正座は禁止」
と思っている方もおられます。
しかし現在では、そのような考え方は一般的ではなくなっています。
実際に人工股関節手術後に正座をされている患者さんもおられます。
なぜ昔は正座禁止と言われていたの?
以前は、
- 足を組まない
- あぐらをかかない
- 正座をしない
- 股関節を深く曲げない
といった厳しい生活制限が指導されることがありました。
これは当時の人工関節や手術手技では、現在より脱臼リスクが高かったためです。
そのため、
「危険そうな動きは避けましょう」
という考え方が広く行われていました。
現在は考え方が変わっています
近年は、
- 人工関節の性能向上
- 手術技術の進歩
- 術前計画の精度向上
- 大径骨頭の普及
によって人工股関節の安定性が向上しています。
そのため、多くの施設で以前ほど厳しい生活制限を設けなくなっています。
もちろん脱臼リスクがゼロになるわけではありませんが、
正座そのものを一律に禁止する根拠は乏しい
と考えられるようになっています。
正座できるかどうかは股関節だけではありません
実は正座を決めるのは股関節だけではありません。
正座には、
- 膝関節
- 足関節
- 筋肉の柔軟性
も大きく関係します。
そのため、
- 膝が痛い
- 膝が曲がらない
- 足首が硬い
という方では、股関節が問題なくても正座が難しいことがあります。
人工股関節が傷むことはないの?
患者さんが心配されるのは、
「正座をすると人工関節が傷むのでは?」
という点です。
しかし現在のところ、
正座によって人工股関節が早く壊れることを示した明確な報告はありません。
むしろ無理な力を加えることや転倒の方が問題になります。
当院の考え方
当院では、人工股関節手術後の日常生活について、原則として特別な制限を設けていません。
正座についても、一律に禁止していません。
患者さんが必要以上に生活を制限するのではなく、
痛みなく自然な生活を取り戻すこと
を重視しています。
もちろん術後早期には無理を避ける必要がありますが、十分に回復した後は患者さんの状態に応じて日常生活を送っていただいています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 人工股関節手術後に正座はできますか?
可能です。実際に正座をされている患者さんもおられます。
Q2. 一生正座は禁止ですか?
当院では一律に禁止していません。
Q3. 正座すると人工関節が傷みますか?
正座によって人工関節が早く壊れることを示した明確な報告はありません。
Q4. 正座できない場合は何が原因ですか?
膝関節や足関節の問題、筋肉の柔軟性などが影響していることがあります。
Q5. あぐらもできますか?
患者さんの状態によりますが、当院では禁止していません。
まとめ
人工股関節手術後でも正座は可能です。
現在では以前のような厳しい生活制限を設けない施設も増えており、当院でも正座を一律に禁止していません。
大切なのは人工関節を過度に意識して生活することではなく、痛みのない生活を取り戻すことです。
ご相談・診療について
当センターには福知山市を拠点に、北近畿エリア(綾部市・京丹後市・宮津市・与謝野町・舞鶴市・豊岡市・養父市・朝来市・丹波市)からも多数ご来院いただいています。
人工股関節手術をご検討中の方、術後の生活について不安のある方はお気軽にご相談ください。
この記事は京都ルネス病院人工関節センター長、整形外科専門医・人工関節認定医 藤井嵩が執筆しています。
参考文献・出典
- Rowan FE, et al. Prevention of Dislocation After Total Hip Arthroplasty. J Arthroplasty. 2018.
- Seagrave KG, et al. Is There an Association Between Surgical Approach and THA Dislocation Rate? Clin Orthop Relat Res. 2017.
- AAHKS Patient Education Materials.

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