変形性股関節症と診断されると、
「手術しないと歩けなくなりますか?」
「このまま我慢していて大丈夫でしょうか?」
という質問をよくいただきます。
結論から言うと、
人工股関節手術を受けなかったからといって、全員がすぐ歩けなくなるわけではありません。
一方で、痛みを我慢し続けることで活動量が低下し、健康寿命に影響する可能性があります。
この記事では、人工股関節手術を受けない場合に起こりうることと、手術を急ぐべき人・急がなくてよい人について解説します。
この記事でわかること
- 人工股関節手術をしないとどうなるのか
- 変形性股関節症の自然経過
- 活動量低下による影響
- 手術を急ぐべき人
- まだ手術を急がなくてよい人
レントゲンが悪くても手術が必要とは限りません
まず知っていただきたいのは、
レントゲンの変形の程度と痛みは必ずしも一致しない
ということです。
実際には、
- レントゲンでは高度変形でも元気に旅行している方
- レントゲン変化は軽度なのに強い痛みで困っている方
の両方がおられます。
そのため、人工股関節手術の適応はレントゲンだけでは決まりません。
重要なのは、
- 痛みの程度
- 歩行能力
- 生活への影響
- 本人の希望
です。
痛みを我慢すると活動量が低下することがあります
問題となるのは、
痛みそのものよりも、痛みによって活動量が低下すること
です。
股関節が痛くなると、
- 外出しなくなる
- 買い物を控える
- 旅行をやめる
- 運動しなくなる
といった変化が起こることがあります。
その結果、
- 筋力低下
- 体力低下
- バランス能力低下
につながる可能性があります。
フレイルやサルコペニアのリスク
高齢者では活動量低下によって、
- フレイルやサルコペニアといった状態
が進行する可能性があります。
- 転倒
- 骨折
- 介護リスク
とも関連しています。
そのため、整形外科では単にレントゲンを治療しているのではなく、
患者さんの活動性や健康寿命を守ること
を重視しています。
認知症やうつとの関連も指摘されています
運動習慣の低下は、
- 認知機能低下
- 抑うつ傾向
- 社会的孤立
との関連が報告されています。
もちろん股関節だけが原因ではありませんが、
「痛いから外出しない」
という状態が長期間続くことは望ましいことではありません。
手術を急ぐべき人とは?
- 歩行距離が大きく低下している
- 夜間痛がある
- 鎮痛薬でも改善しない
- 旅行や趣味を諦めている
- 生活の質が明らかに低下している
このような場合は人工股関節手術による恩恵が大きい可能性があります。
まだ手術を急がなくてもよい人とは?
- 痛みが軽い
- 日常生活に支障が少ない
- 趣味や運動が継続できている
- 本人が手術を希望していない
このような方は、経過観察という選択肢も十分あります。
人工股関節手術は「早い者勝ち」ではありませんが、患者さんの生活と価値観に合わせてタイミングを決めることが重要です。
まとめ
人工股関節手術を受けないからといって、全員がすぐ歩けなくなるわけではありません。
しかし、痛みを我慢し続けることで活動量が低下し、健康寿命に影響する可能性があります。
大切なのはレントゲンではなく、
「今の生活にどれだけ困っているか」
です。
手術をするかどうか迷われている方は、一度専門医へ相談してみることをおすすめします。
ご相談・診療について
当センターには福知山市を拠点に、北近畿エリア(綾部市・京丹後市・宮津市・与謝野町・舞鶴市・豊岡市・養父市・朝来市・丹波市)からも多数ご来院いただいています。
この記事は京都ルネス病院人工関節センター長、整形外科専門医・人工関節認定医 藤井嵩が執筆しています。
参考文献・出典
- Veronese N, et al. Osteoarthritis and Frailty: A Systematic Review. J Am Med Dir Assoc. 2017.
- Cruz-Jentoft AJ, et al. Sarcopenia: Revised European Consensus. Age Ageing. 2019.
- World Health Organization. Physical Activity Guidelines.
- Learmonth ID, et al. The operation of the century: total hip replacement. Lancet. 2007.

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