膝関節の痛みに、専門的な治療選択を。
膝の痛みにはさまざまな原因があります。京都ルネス病院人工関節センターでは、症状や画像所見、年齢、活動性、生活への影響などを踏まえ、保存治療から人工膝関節手術まで、一人ひとりに適した治療方法を検討します。
膝関節について
膝関節は、太ももの骨である大腿骨とすねの骨である脛骨、そして膝のお皿にあたる膝蓋骨から構成される複雑な構造です。
これらの骨は弾力性があり滑らかな軟骨で覆われており、関節の動きをスムーズにし、体重がかかる際の衝撃を吸収するクッションとしての役割を果たしています。周囲を囲む靱帯や筋肉が安定性を加え、膝の健康を支えています。レントゲン写真で見ると、大腿骨と脛骨の間には空間がありますが、実際にはこの部分には軟骨が存在し、膝を痛みや損傷から保護しています。
しかし、軟骨は年齢とともに摩耗しやすく、関節リウマチや過去のスポーツによるけがが原因で変形することもあります。これが変形性膝関節症の発症につながり、体重がかかるたびに軟骨下の骨への負担が増えることで、膝の痛みやこわばりを引き起こす原因となります。
膝の痛みの主な原因
膝関節痛を引き起こす代表的な病気について解説します。
変形性膝関節症
膝の軟骨がすり減ることで炎症や痛み、変形を生じる、人工膝関節手術の最も代表的な原因疾患です。
SONK/SIFK
従来「特発性膝骨壊死(SONK)」と呼ばれてきた病態の多くは、現在では膝軟骨下脆弱性骨折(SIFK)を背景とする病態として理解されるようになっています。
関節リウマチ
免疫の異常によって関節に炎症が起こり、進行すると軟骨や骨の破壊につながる疾患です。
変形性膝関節症
変形性膝関節症は、主に加齢や過度の使用、体重の過多による負担などで膝の軟骨がすり減ることによって引き起こされる病気です。膝を構成する大腿骨と脛骨の間にある重要な軟骨が減少すると、骨への負担が増え、炎症が生じ、膝の痛みを伴うようになります。
正常な膝と変形性膝関節症を示すレントゲン写真を比較すると、大腿骨と脛骨の間の隙間の違いが分かります。この空間が狭くなることは、軟骨がすり減っていることを示す所見の一つです。
変形性膝関節症が進行すると、痛みは特に座った状態から立ち上がるときや、階段を降りるとき、歩行時に顕著になります。痛みは膝の内側や後ろ側に出やすく、進行すると下肢全体の形状にも変化がみられ、多くの場合はO脚の傾向になりますが、X脚になる場合もあります。
保存的治療を行っても症状が強く、日常生活への影響が大きい場合には人工膝関節置換術が選択肢となります。変形性膝関節症は人工膝関節手術を必要とする患者さんの中で最も一般的な原因ですが、SIFK、関節リウマチ、膝の外傷など、他の原因によって人工関節が必要となる場合もあります。
特発性膝骨壊死(SONK)/
膝軟骨下脆弱性骨折(SIFK)
従来「特発性膝骨壊死(Spontaneous Osteonecrosis of the Knee:SONK)」と呼ばれてきた病態の多くは、現在では膝軟骨下脆弱性骨折(Subchondral Insufficiency Fracture of the Knee:SIFK)を背景とする病態として理解されるようになっています。
中高年、特に女性にみられることが多く、明らかな外傷がないにもかかわらず、突然膝の内側に強い痛みを生じることがあります。
近年では、内側半月板後根損傷 Medial Meniscus Posterior Root Tear(MMPRT)との関連も示唆されています。MMPRTが起こることで、半月板が持つクッション・荷重分散機能が大きく低下し、膝関節の内側に大きな負担がかかると考えられています。
症状は変形性膝関節症にも似ているため、初期には両者を区別することが難しい場合があります。発症後早期にはレントゲン検査で明らかな変化がみられないこともあります。
MRIでは、レントゲンで変化が現れる前の段階でも軟骨下骨の病変を確認できることがあり、SIFKの早期診断に重要な検査です。
病変が進行すると軟骨下骨や関節面の陥没を生じ、関節の隙間が狭くなることで変形性膝関節症へ進行することがあります。
症状や病期によって治療方法は異なります。保存的治療によって症状が改善する場合もありますが、関節面の陥没や変形が進み、痛みや日常生活への影響が大きくなった場合には手術が必要となることがあります。
障害が膝の一部分に限局している場合には、単顆型人工膝関節置換術(UKA)が選択肢となることがあります。
関節リウマチ(RA)
関節リウマチは、体内の免疫システムが誤って自身の体組織を攻撃することで起こる病気です。主に手足の関節が痛み、進行すると関節の軟骨や骨が徐々に破壊されます。
近年は生物学的製剤をはじめとした薬剤の進歩により、重症化する患者さんは大きく減少していますが、関節の破壊が進んだ場合には人工関節置換手術が必要となることがあります。
手術治療
人工膝関節手術には、膝全体を置換するTKAと、障害された部分のみを置換するUKAがあります。
人工関節手術が必要かどうか、またTKAとUKAのどちらが適しているかは、レントゲンの変形だけで決まるものではありません。症状、病変の広がり、靱帯の状態、年齢、活動性、生活への影響などを総合的に評価して判断します。
全人工膝関節置換術(TKA)
変形性膝関節症などで膝の痛みをもたらす原因となっている損傷した軟骨と骨の表面を整え、人工の関節に置き換える治療です。
TKAでは、傷んだ関節面を人工関節に置き換えることで痛みの改善を図るとともに、膝の安定性や可動性、脚全体のバランスを考慮して手術を行います。
低侵襲手術
当センターでは、必要な術野を確保しながら筋肉や周囲の軟部組織への侵襲をできるだけ抑える手術を行っています。身体への負担を抑え、術後の回復につなげることを目指します。
3D技術を用いた術前計画
手術の計画段階では3D技術を用いて、患者さんそれぞれの骨格を評価します。人工関節のサイズや設置位置などを事前に検討し、それぞれの骨格に応じた手術計画を立てます。
ナビゲーションシステム
手術中にはナビゲーションシステムなどの手術支援技術を活用し、骨格や人工関節の設置位置などを確認しながら手術を行います。
インプラントデザインの選択
人工膝関節にはさまざまなインプラントデザインがあります。患者さんの膝の形、変形の程度、靱帯の状態などに応じて、使用するインプラントを選択します。
O脚・X脚と下肢アライメント
手術ではO脚やX脚を含めた脚全体のアライメントも評価します。人工関節を設置するだけでなく、患者さんそれぞれの骨格や軟部組織の状態を確認しながら下肢全体のバランスを考えて手術を行います。
術前から術後まで一貫して診療
当センターで行う人工関節手術はセンター長自身が執刀し、術前の評価から手術、術後リハビリ、長期フォローまで一貫して診療に携わります。
単顆型人工膝関節置換術(UKA)
膝関節全体ではなく、障害を受けた一部分のみを人工関節に置き換える手術です。
単顆型人工膝関節置換術(UKA)は、変形性膝関節症において関節の一部分に限局した障害がみられる場合に適用される手術方法です。特に内側または外側の大腿骨と脛骨間の関節軟骨が損傷しており、残りの関節部分が比較的健康な状態を保っている場合などが対象となります。
UKAでは、こうした部分的な摩耗が原因となっている痛みを改善するために、障害を受けた膝関節の一部だけを人工関節に置き換えます。
全人工膝関節置換術と比較したUKAの特徴の一つは、手術の侵襲を抑えられることです。手術時に削る骨の量が少なく、切開も比較的小さくできるため、適切な患者さんでは術後の痛みや腫れが少なく、早期回復につながる可能性があります。
さらに、靱帯を含めた関節の健康な構造をより多く温存できることから、術後に「より自然に感じられる膝」や膝の曲がりを期待できる場合があります。
UKAは適応の判断と手術経験が重要です
UKAは、膝の障害が一部分に限局している患者さんにとって有力な治療選択肢となります。一方で、すべての患者さんに適応できる手術ではなく、変形の範囲、靱帯機能、残っている関節面の状態などを確認して適応を判断する必要があります。
UKAの長期成績は、患者選択、インプラント、術者や施設の経験量などによって幅があります。systematic reviewでは、内側UKAの15年インプラント生存率は88.9%と報告されています。
一方、大規模registryデータではcase seriesより低い再置換回避率が報告されることもあり、UKAの成績は一つの数字だけでは評価できません。UKAでは適切な患者選択や術者・施設の経験が特に重要と考えられています。
当センター長はUKAを継続して執刀しており、適応のある患者さんにはTKAだけでなくUKAも選択肢として検討しています。
人工膝関節はどのくらい長持ちする?
人工膝関節は長期成績について多くの研究や関節レジストリーからデータが蓄積されています。
人工膝関節の20年後の長期成績
90.1%2019年にLancetに掲載されたsystematic review・meta-analysisでは、長期追跡研究に加えてnational joint replacement registryのデータが解析されました。
そのうち、20年時点まで追跡可能だった88,532例のTKAに基づくregistryデータでは、20年時点の人工膝関節生存率は90.1%(95%CI 89.7〜90.4%)と推定されています。
また、同じ解析では25年時点のTKA生存率は82.3%と報告されています。ここでいう「生存率」は、20年間まったく症状がなかった割合ではありません。人工関節を入れ替えるなどの再置換術を必要とせず、人工関節が使用され続けていた割合を示しています。
一方で、人工関節は永久に問題が起こらないものではありません。時間の経過に伴う人工関節の緩みや摩耗、感染、人工関節周囲骨折などによって再手術が必要になる場合があります。
深部感染、人工関節の緩み、人工関節周囲骨折、血栓症、神経障害などの合併症が起こる可能性があります。手術前には患者さんそれぞれの状態を踏まえて、予想される利益だけでなくリスクについても説明します。
そのため、人工関節手術を受けた患者さんには、術後も定期的に医療機関を受診し、レントゲン撮影などによる評価を受けることをおすすめしています。当センターでは、少なくとも年に一度程度の定期的な評価を推奨しています。
以前に人工関節手術を受けたにもかかわらず、定期的なレントゲン撮影をしていない方は、まず手術を受けた医療施設や担当医に相談することをおすすめします。
手術を受けた医療機関が遠方で受診が困難な場合には、当センターでの外来フォローについてもご相談ください。
北近畿地域からの膝のご相談
当センターには福知山市を拠点に、北近畿エリア(綾部市・京丹後市・宮津市・与謝野町・舞鶴市・豊岡市・養父市・朝来市・丹波市)からも、膝の痛みや人工関節手術についてご相談に来院されています。
膝の痛みや人工関節手術についてご相談ください
「本当に手術が必要なのか」「まだ手術は早いのか」「TKAとUKAのどちらが適しているのか」など、手術を迷っている段階からご相談いただけます。
