この記事でわかること
- TKA(人工膝関節全置換術)とUKA(人工膝関節単顆置換術)の違い
- UKAのメリットと、知っておくべきデメリット
- どのような膝がUKAに向いているのか
- 「UKAの方が小さい手術だから良い」とは限らない理由
- TKAとUKAをどのように選択するのか
TKAとUKAはどう違う?
変形性膝関節症に対する人工膝関節手術には、大きく分けてTKA(人工膝関節全置換術)とUKA(人工膝関節単顆置換術)があります。
| 術式 | どのような手術? |
|---|---|
| TKA(全置換術) | 大腿骨・脛骨の関節面を広く人工関節に置き換える手術 |
| UKA(単顆置換術) | 傷んでいる内側または外側の一部分だけを人工関節に置き換える手術 |
日本では内側型の変形性膝関節症が多いため、UKAでは膝の内側だけを人工関節に置き換える内側UKAが多く行われます。
大きな違いは、「膝全体を置き換えるのか、傷んだ部分だけを置き換えるのか」という点です。
変形性膝関節症そのものについて詳しく知りたい方は、以下も参考にしてください。
UKAのメリットは「自分の膝をより多く残せること」
UKAでは、傷んでいない関節面や骨、靱帯などをできるだけ温存します。
そのため、適切な患者さんに行った場合には、TKAと比較して次のようなメリットが期待できます。
- 骨や軟部組織の切除範囲が少ない
- 前十字靱帯など膝本来の構造を温存できる
- 術後早期の回復が比較的早い
- 入院期間が短くなる傾向がある
- 膝の動きや感覚を保ちやすい可能性がある
2019年にBMJに掲載されたsystematic reviewでも、UKAはTKAと比較して入院期間が短く、一部の機能評価などで良好な結果が報告されています。
ただし、「UKAの方が小さい手術だから、TKAより優れている」という意味ではありません。
UKAには「再置換率が高い」という弱点もある
UKAについて患者さんに説明するとき、メリットだけでなくデメリットも知っていただくことが重要です。
大規模なレジストリー研究やsystematic reviewでは、一般にUKAはTKAより再置換術(人工関節を入れ替える手術)の割合が高いことが報告されています。
2019年のBMJのsystematic reviewでも、UKAは早期回復や一部の合併症などでは有利な結果を示した一方、5年時点のrevision rateはTKAより高いという結果でした。
つまり、TKAとUKAにはそれぞれ異なる長所と短所があります。
| 比較 | TKA | UKA |
|---|---|---|
| 置換範囲 | 広い | 限定的 |
| 骨・靱帯の温存 | UKAより少ない | 多く温存できる |
| 適応範囲 | 広い | 限られる |
| 早期回復 | 標準的 | 比較的早い傾向 |
| 再置換率 | 一般に低い | レジストリーデータではTKAより高い |
どんな人がUKAに向いている?
UKAで最も重要なのは、「部分置換で十分な膝なのか」を正しく見極めることです。
代表的な内側UKAでは、一般的に次のような点を確認します。
- 変形や軟骨障害が主として膝の内側に限局している
- 外側の関節軟骨が比較的保たれている
- 前十字靱帯など膝の安定性に関わる構造が機能している
- 変形がある程度矯正可能である
- 炎症性関節炎など、UKAに適さない病態がない
一方で、以前は「若い」「体重が重い」「膝蓋大腿関節にも変形がある」といった条件がUKAの禁忌として挙げられることがありましたが、現在ではそれだけで一律にUKAを除外する考え方ではなくなっています。
特に膝蓋大腿関節の変形については、その程度や部位、症状などを含めて判断する必要があります。
また、UKAは「比較的早期の変形性膝関節症だから行う手術」とは限りません。むしろ、置換するコンパートメントに明確な高度軟骨障害があり、その他の部分が保たれているかどうかが重要です。
人工関節手術を検討するタイミングについては、年齢やレントゲンだけで決まるものではありません。
▶ 「まだ手術は早い」と言われた方へ|人工関節を考えるタイミングとは
▶ 人工関節はやらない方がいい人とは?手術を急ぐ前に確認したいポイント
MRIがあればUKAかTKAか判断できる?
必ずしもそうではありません。
TKAとUKAの選択では、通常のレントゲンだけでなく、立位やストレス撮影などによる関節の評価、身体診察、靱帯の状態、変形の程度などを総合して判断します。
MRIが判断の参考になる場合もありますが、MRIだけでUKAの適応が決まるわけではありません。
画像だけではなく、患者さんが「どこに、どのような痛みを感じているのか」も含めて評価することが重要です。
▶ レントゲンが悪い=手術ではない?膝・股関節痛と手術適応について
UKAは「適応」と「手術経験」が重要
UKAは置換範囲が小さい一方で、どの患者さんにUKAを行うかという適応判断と、正確な手術手技の両方が重要です。
実際、英国のNational Joint Registryを用いた研究では、UKAの手術件数が少ない術者・施設ほどrevision rateが高く、UKAを継続的に行う術者では良好な成績が報告されています。
これは単純に「年間○件以上なら安全」という意味ではありませんが、UKAでは適応判断を含めた術者の経験が成績に関係する可能性を示す重要なデータです。
当センターではTKAとUKAをどう選んでいる?
当センターでは、UKAを「TKAより小さいから良い手術」、TKAを「変形がひどい人のための手術」と単純に考えているわけではありません。
重要なのは、その患者さんの膝に対して、どちらの手術がより適しているかです。
レントゲン所見、変形の部位、靱帯の状態、膝の動き、痛みの部位、年齢や活動性などを総合して、TKA・UKAの適応を判断します。
UKAの適応がある場合には、正常な骨や靱帯をできるだけ温存できることは大きなメリットです。
一方、病変が複数のコンパートメントに広がっている場合などには、無理にUKAを選択せずTKAを行う方が適切な場合があります。
また、術式を選ぶ際には「どちらが小さい手術か」だけでなく、手術によって痛みや歩行、生活がどこまで改善するのかも重要です。
▶ 人工関節手術でどこまで良くなる?TKA・UKA・THAの痛み・歩行・満足度を解説
よくある質問(FAQ)
Q1. UKAの方が小さい手術なら、UKAを選んだ方がいいですか?
必ずしもそうではありません。UKAは適応となる膝が限られています。病変が膝全体に広がっている場合などに無理にUKAを行うことは適切ではなく、TKAの方が適している場合があります。
Q2. UKAの方がTKAより長持ちしますか?
一般的なレジストリーデータでは、UKAはTKAよりrevision rateが高いことが報告されています。一方、適切な患者選択と十分な経験のある術者によるUKAでは良好な長期成績も報告されています。
Q3. UKAの方が膝は自然に感じますか?
UKAでは前十字靱帯など膝本来の構造をより多く温存するため、TKAと比較して膝の動きや感覚を保ちやすい可能性があります。ただし、感じ方や術後成績には個人差があります。
Q4. 膝蓋骨の軟骨も傷んでいたらUKAはできませんか?
膝蓋大腿関節に変形があるという理由だけで、必ずUKAができないわけではありません。変形の程度や部位、症状などを総合して判断します。
Q5. 手術前にTKAかUKAか決められますか?
多くの場合は術前の画像や診察から判断できます。ただし、最終的には実際の軟骨や靱帯の状態などを確認し、術中所見を含めて判断する場合もあります。
Q6. 年齢が高いとUKAはできませんか?
年齢だけでUKAの適応が決まるわけではありません。膝の変形がどこに限局しているか、靱帯が機能しているか、全身状態や活動性などを含めて判断します。
人工関節手術と年齢の関係については、以下の記事も参考にしてください。
まとめ
- TKAは膝の関節面を広く人工関節に置き換える手術
- UKAは傷んだ部分だけを置換し、正常な骨や靱帯をより多く温存する手術
- UKAは早期回復などのメリットがある一方、一般的なレジストリーデータではTKAより再置換率が高い
- UKAはすべての変形性膝関節症に適しているわけではない
- 「どちらが優れているか」ではなく、患者さんの膝にどちらが適しているかが重要
- UKAでは適切な患者選択と手術経験が特に重要
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ご相談・診療について
「TKAとUKAのどちらが自分に向いているのか知りたい」「できるだけ自分の膝を残せる方法があるのか知りたい」という場合には、まず現在の膝の状態を正確に評価することが重要です。
当センターでは、レントゲンなどの画像所見だけでなく、症状や身体所見、生活への影響なども含めて人工膝関節手術の適応を判断しています。
当センターには福知山市を拠点に、北近畿エリア(綾部市・京丹後市・宮津市・与謝野町・舞鶴市・豊岡市・養父市・朝来市・丹波市)からもご来院いただいています。
この記事は
京都ルネス病院 人工関節センター
センター長/整形外科専門医・日本人工関節学会認定医
藤井 嵩 が執筆しています。
参考文献
- Wilson HA, Middleton R, Abram SGF, et al. Patient relevant outcomes of unicompartmental versus total knee replacement: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2019;364:l352. doi:10.1136/bmj.l352.
PubMedで確認する - Liddle AD, Pandit H, Judge A, Murray DW. Effect of surgical caseload on revision rate following total and unicompartmental knee replacement. J Bone Joint Surg Am. 2016;98(1):1-8. doi:10.2106/JBJS.N.00487.
PubMedで確認する - Baker P, Jameson S, Critchley R, et al. Center and surgeon volume influence the revision rate following unicondylar knee replacement: an analysis of 23,400 medial cemented unicondylar knee replacements. J Bone Joint Surg Am. 2013;95(8):702-709. doi:10.2106/JBJS.L.00520.
PubMedで確認する - Rodríguez-Merchán EC, Gómez-Cardero P. Unicompartmental knee arthroplasty: current indications, technical issues and results. EFORT Open Rev. 2018;3:363-373. doi:10.1302/2058-5241.3.170048.
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