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90歳でも人工関節手術は受けられる?高齢者の手術適応を専門医が解説

2026 10/06
人工関節手術を考えている方へ
2026年9月6日2026年10月6日

【この記事でわかること】

  • 90歳でも人工関節手術を受けられるのか
  • 80代・90代で手術を検討するときに年齢より重要なこと
  • 高齢者の人工膝関節・人工股関節手術で注意すべきリスク
  • 「手術をしないこと」のリスクも考える必要がある理由
  • 京都ルネス病院人工関節センターでの考え方

目次

90歳でも人工関節手術は受けられる?

「90歳ですが、人工関節手術はできますか?」

高齢の患者さんやご家族から、このような質問を受けることがあります。

結論からいうと、90歳という年齢だけを理由に、人工関節手術の対象外になるとは限りません。

人工膝関節置換術(TKA/UKA)や人工股関節置換術(THA)には、「○歳を超えたら手術できない」という一律の年齢上限があるわけではありません。

一方で、90歳以上では若い患者さんと比べて周術期の合併症などのリスクが高くなるため、「年齢はまったく関係ない」と考えるのも適切ではありません。

重要なのは、暦年齢だけではなく、その患者さんが現在どの程度元気に生活しているのか、関節の痛みが生活をどの程度妨げているのか、そして手術によってどの程度の利益が期待できるのかを総合的に判断することです。

90歳でも手術を検討することが合理的なケース

たとえば90歳であっても、以下のような方では人工関節手術を検討することがあります。

  • もともとは自分で歩いて生活している
  • 認知機能や全身状態が比較的保たれている
  • 膝や股関節の痛みが強く、歩行や日常生活を大きく妨げている
  • 保存療法を行っても十分な改善が得られない
  • 痛みの主な原因が、手術対象となる膝関節や股関節にあると判断できる

こうした患者さんで、全身状態や併存疾患、麻酔・手術のリスクを評価したうえで期待できる利益が大きいと判断されれば、90歳以上でも人工関節手術を選択することは十分に合理的だと考えています。

年齢より重要なのは「現在の身体機能」

同じ90歳でも、身体の状態は人によって大きく異なります。

自分で歩いて買い物や外出をしている90歳の方と、すでにほとんど歩くことができず全身状態も不安定な90歳の方では、人工関節手術によって期待できる利益とリスクは同じではありません。

そのため当センターでは、年齢だけではなく、以下のような点を総合して判断します。

  • 現在の歩行能力
  • 日常生活動作(ADL)
  • 心臓・肺などの全身状態
  • 糖尿病などの併存疾患
  • 認知機能
  • フレイルの程度
  • 痛みによって失われている生活機能
  • 手術によって期待できる生活の改善

「何歳か」だけではなく、「今どのように生活している人なのか」が重要です。

90歳以上では手術のリスクも高くなる

もちろん、90歳以上の人工関節手術を若い患者さんとまったく同じように考えることはできません。

90歳代と80歳代の人工膝関節・人工股関節手術を比較したシステマティックレビュー・メタ解析では、90歳代でも手術による臨床的利益が得られる一方、周術期合併症や死亡リスクは80歳代より高いことが報告されています。

また、高齢になるほど心疾患、呼吸器疾患、腎機能障害、糖尿病などの併存疾患を持つ方も増えるため、術前評価と周術期管理は特に重要になります。

「90歳でも手術できる」ことと、「90歳でも手術リスクが若い人と同じ」ということはまったく別です。

手術によって得られる利益と、手術・麻酔に伴うリスクを患者さんごとに比較する必要があります。

90歳以上でも人工膝関節手術で改善は期待できる?

90歳以上の人工膝関節置換術(TKA)についても、術後の疼痛や身体機能の改善を示した研究が報告されています。

90歳代の患者さんを対象とした研究では、TKA後に膝の機能評価が大きく改善したことが報告されています。

もちろん、これは適切に患者選択された集団での結果であり、すべての90歳以上の患者さんにそのまま当てはまるものではありません。

それでも、90歳以上であるという理由だけで、人工膝関節手術による疼痛・機能改善の可能性まで否定するべきではないことを示すデータと考えられます。

90歳以上でも人工股関節手術で改善は期待できる?

人工股関節置換術(THA)についても、90歳代で術後の股関節機能が改善したことを示す報告があります。

一方で、高齢になるほど周術期合併症などのリスクは高くなるため、THAについても「90歳だからできない」「90歳でも問題なくできる」という二択ではありません。

「この90歳の患者さんにとって、手術によって得られる利益がリスクを上回るか」を考えることが重要です。

「手術をしないこと」のリスクも考える

高齢者の人工関節手術を考えるときには、手術のリスクに目が向きがちです。

しかし、手術をしなければ何のリスクもない、とは限りません。

強い膝痛や股関節痛によって歩行量が減ると、筋力や身体機能が低下し、それまで自立していた日常生活が難しくなることがあります。

特に高齢者では、一度大きく活動性が低下すると、以前の生活レベルまで戻ることが難しくなる場合があります。

「手術するリスク」だけではなく、「痛みのために歩けなくなり、生活機能を失っていくリスク」も含めて考えることが重要です。

当センターでも90歳以上の人工関節手術を行っています

京都ルネス病院人工関節センターでも、90歳以上という年齢だけを理由に人工関節手術の対象外とはしていません。

90歳以上であっても、もともとの歩行能力が保たれており、膝や股関節の痛みが生活を妨げる主な原因となっている場合には、全身状態や併存疾患、手術・麻酔のリスクなどを十分に評価したうえで、人工関節手術を選択することは十分に合理的だと考えています。

実際に当センターでも、90歳以上の患者さんに人工関節手術を行い、術後に歩行能力を回復して退院された例があります。

もちろん、90歳以上のすべての患者さんに手術を勧めるという意味ではありません。反対に、年齢が若くても、全身状態や身体機能、痛みの原因などによっては手術を勧めないこともあります。

当センターが重視しているのは、「年齢で決める」のではなく、「その患者さんにとって手術をすることが本当に利益になるのか」で決めることです。

80代でも人工関節手術は受けられる?

80代についても、年齢だけで人工関節手術の適応外になるわけではありません。

80歳以上の患者さんを対象とした研究でも、若い患者さんより一部の合併症が増える傾向はあるものの、年齢そのものだけではなく、併存疾患や全身状態に基づいて適応を判断することが重要とされています。

80代・90代という数字だけで判断するのではなく、個々の身体機能と手術によって得られる利益を評価することが重要です。

変形性股関節症について詳しくはこちら

変形性膝関節症について詳しくはこちら

よくある質問(FAQ)

Q1. 人工関節手術には年齢制限がありますか?

一律の年齢上限が決められているわけではありません。年齢だけではなく、全身状態、歩行能力、併存疾患、痛みによる生活への影響、手術によって期待できる利益などを総合して判断します。

Q2. 90歳でも人工膝関節手術はできますか?

90歳以上でも、全身状態が保たれ、膝の痛みが歩行や日常生活を大きく妨げている場合には手術を検討することがあります。90歳代でもTKAによる疼痛・機能改善を報告した研究があります。

Q3. 90歳でも人工股関節手術はできますか?

人工股関節についても、年齢だけで手術の可否は決まりません。90歳代でもTHA後の機能改善が報告されています。ただし、高齢になるほど合併症などのリスクは高くなるため、慎重な術前評価が必要です。

Q4. 高齢なら手術をしない方がよいですか?

必ずしもそうではありません。手術リスクだけでなく、関節痛によって歩行能力や自立した生活が失われていくリスクも考える必要があります。両者を比較して判断します。

Q5. 何歳までなら人工関節手術を受けられますか?

「○歳まで」という一律の線引きはできません。同じ年齢でも身体機能や併存疾患は大きく異なります。暦年齢よりも、現在の身体機能と手術によって期待できる利益が重要です。

まとめ

  • 人工関節手術に一律の年齢上限はない
  • 90歳以上でも人工膝関節・人工股関節手術を検討できる場合がある
  • ただし高齢になるほど周術期合併症などのリスクには注意が必要
  • 暦年齢より、全身状態・歩行能力・併存疾患・フレイルなどが重要
  • 「手術するリスク」と「手術しないことで活動性を失うリスク」の両方を考える
  • 当センターでも90歳以上で人工関節手術を行い、歩行能力を回復して退院された例がある

ご相談・診療について

人工関節手術では、「何歳だから手術する・しない」という単純な判断はしていません。

痛みの程度、画像所見、現在の生活、歩行能力、全身状態などを確認し、手術によって期待できる利益とリスクを総合して判断します。

「高齢だから手術は難しいと言われた」「90歳でも手術を検討する意味があるのか知りたい」という方も、一度ご相談ください。

当センターには福知山市を拠点に、北近畿エリア(綾部市・京丹後市・宮津市・与謝野町・舞鶴市・豊岡市・養父市・朝来市・丹波市)からも多数ご来院いただいています。

この記事は
京都ルネス病院人工関節センター
センター長/整形外科専門医・人工関節認定医
藤井 嵩 が執筆しています。

センター長紹介はこちら

参考文献

  1. Mortality and complication rates in nonagenarians and octogenarians undergoing total hip and knee arthroplasty: a systematic review and meta-analysis. Eur Geriatr Med. 2022.
    PubMed
  2. Contemporary Mortality Rate and Outcomes in Nonagenarians After Primary Total Knee Arthroplasty. J Arthroplasty. 2021.
    PubMed
  3. Contemporary Mortality Rate and Outcomes in Nonagenarians Undergoing Primary Total Hip Arthroplasty. J Arthroplasty.
    PubMed
  4. Is Elective Total Hip Arthroplasty Safe in Nonagenarians?: An Arthroplasty Registry Analysis. J Bone Joint Surg Am. 2023.
    PubMed
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