目次
この記事でわかること
- 人工関節手術は何歳までできるのか?
- 高齢者が手術を受けるときの注意点
- 年齢よりも大切な判断基準とは?
- 超高齢者(90歳以上)の実際の症例や考え方
「年だから…」とあきらめる必要はありません
患者さんからよくいただくご質問に、
「もう80歳だから手術は無理ですよね…」
「90歳でも手術ってできますか?」
というものがあります。
結論から言えば、年齢だけで手術の可否は決まりません。
医学的には、90歳を超えても人工関節手術を受けている方は多数おられます。
何歳までできる?実際の目安
| 年齢層 | 判断の目安 |
|---|---|
| 〜75歳 | 基本的に大きな問題はない方が多い。 |
| 75〜85歳 | 一般的に最も多い年齢層。多くの方が適応あり |
| 85歳〜90歳 | 全身状態と生活背景により個別判断。実施例は豊富 |
| 90歳以上 | 安全面の評価(心肺機能・認知機能・家族の支援)をしっかり行えば実施可能 |
年齢より大切な3つのポイント
- 全身の健康状態(心臓・肺・糖尿病・腎臓など)
→ 麻酔に耐えられるか?術後に合併症のリスクが高くないか? - 認知機能と運動能力
→ リハビリが可能か?自立して生活を改善する意欲があるか? - ご本人の希望と家族のサポート体制
→ 「歩けるようになりたい」「トイレに一人で行きたい」といった明確な目標がある方は回復が早いです
高齢者の手術における注意点
- **肺炎・血栓症・せん妄(意識の混乱)**など、年齢によるリスクは確かにあります
- しかし、術前の評価と管理、リハビリ等によってリスクを最小限に抑えることが可能です
- 高齢者にこそ、生活の質(QOL)を上げる意味での手術が効果的です
なぜあえて高齢でも手術をするのか?
- 痛みが強く、寝たきり・閉じこもりになるリスクが高いから
- 転倒骨折を防ぐため(→大腿骨骨折は命に関わることも)
- トイレや入浴が一人でできるようになると、自立が保てるから
→ つまり、**「長生きするための手術」でもあり、「残された時間をより良く生きるための手術」**という考え方です。
📝 まとめ
- 人工関節手術は、年齢ではなく“その人の状態”で判断します
- 90歳を超えても、希望があれば手術は可能ですし術後の経過も良好です
- 生活の質(QOL)や将来の介護リスクを考えると、高齢者こそ検討すべき治療法とも言えます
🏥 ご相談・診療について
当院では、高齢者の人工関節手術にも多くの経験があります。
ご本人やご家族で「年齢的に迷っている…」という方も、まずはお気軽にご相談ください。丁寧にご説明させていただきます。
当センターには福知山市を拠点に、北近畿エリア(綾部市・京丹後市・宮津市・与謝野町・舞鶴市・豊岡市・養父市・朝来市・丹波市)からも多数ご来院いただいています。
この記事は京都ルネス病院人工関節センター センター長、整形外科専門医・人工関節認定医 藤井嵩が執筆しています。
参考文献
- Venishetty N, Toutoungy M, Beale J, Martinez J, Wukich DK, Mounasamy V, Huo MH, Sambandam S. Total Hip Arthroplasty in Nonagenarians – A National In-Patient Sample-Based Study of Perioperative Complications. Geriatr Orthop Surg Rehabil. 2023 May 22;14:21514593231178624. doi: 10.1177/21514593231178624. PMID: 37250017; PMCID: PMC10214100.
- Sizer SC, Bugbee WD, Copp SN, Ezzet KA, Walker RH, McCauley JC, Luu KH, Densley SM, Rosen AS. Hip and Knee Arthroplasty Outcomes for Nonagenarian Patients. J Am Acad Orthop Surg. 2022 Nov 15;30(22):1090-1097. doi: 10.5435/JAAOS-D-22-00406. Epub 2022 Sep 1. PMID: 36326830.

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