「朝起きたら膝が腫れていた」
「特にぶつけた覚えはないのに、膝がパンパンになっている」
「膝に水がたまっていると言われた」
このような膝の腫れは、整形外科の外来でよくみられる症状です。
膝が腫れる原因として、変形性膝関節症を思い浮かべる方も多いと思います。
しかし実際には、
- 変形性膝関節症
- 半月板や靱帯の損傷
- 痛風・偽痛風
- 関節リウマチ
- 感染
- 使いすぎによる炎症
など、さまざまな原因があります。
特に重要なのは、「膝が腫れている」という症状だけでは原因を判断できないことです。
今回は、膝が腫れる主な原因と、自宅で様子をみてもよい場合、早めに医療機関を受診した方がよい場合について、整形外科医の立場から解説します。
この記事でわかること
- 膝が腫れるとはどのような状態なのか
- 膝に水がたまる理由
- 変形性膝関節症と膝の腫れの関係
- 外傷・半月板・靱帯損傷による腫れ
- 痛風・偽痛風・感染による腫れ
- 急いで医療機関を受診した方がよい症状
「膝が腫れる」とはどういう状態?
膝が腫れて見える原因の一つが、関節の中や周囲に液体が増えることです。
関節内に過剰な液体がたまった状態を、医学的には関節水腫(joint effusion)と呼びます。
関節の中にはもともと少量の関節液があり、関節を滑らかに動かす役割を持っています。
ところが関節内に炎症や損傷が起こると、関節液が増えて膝が腫れることがあります。
水が多くたまると、
- 膝がパンパンに張る
- 曲げにくい
- 伸ばしにくい
- 重だるい
- 痛くて体重をかけにくい
といった症状が出ることがあります。
膝に「水がたまる」仕組みや、水を抜く治療については別の記事で詳しく解説しています。
膝に水がたまるのはなぜ?原因・治療法・水を抜く意味について詳しく見る
膝が腫れる主な原因
膝の腫れには、多くの原因があります。
大きく分けると、
- 変形性膝関節症などの慢性的な病気
- 半月板や靱帯などのけが
- 痛風・偽痛風などの急性炎症
- 感染
- 膝周囲の滑液包炎や嚢胞
などが考えられます。
① 変形性膝関節症
中高年以降で膝が繰り返し腫れる原因として、よくみられるものの一つが変形性膝関節症(膝OA)です。
変形性膝関節症は単に「軟骨がすり減る病気」ではありません。
関節全体に変化が起こり、滑膜に炎症が生じることで関節液が増えることがあります。
そのため、
- 歩くと痛い
- 立ち上がりが痛い
- 膝が腫れる
- 曲げ伸ばししにくい
- 膝に水がたまる
といった症状がみられることがあります。
一方で、膝が腫れているからといって、必ず変形性膝関節症とは限りません。
膝OAについて、症状から保存治療・手術治療まで全体像を知りたい方はこちらも参考にしてください。
② 半月板や靱帯などの損傷
スポーツや転倒、膝をひねった後に急に腫れてきた場合には、膝の内部にけがをしている可能性があります。
例えば、
- 前十字靱帯(ACL)損傷
- 半月板損傷
- 骨折
- その他の靱帯損傷
などです。
特に、
- けがをした瞬間に「ポキッ」と音がした
- その後数時間で大きく腫れてきた
- 膝がガクッと抜ける
- 体重をかけられない
といった場合には、単なる使いすぎとは考えず、整形外科での評価が必要です。
半月板損傷と変形性膝関節症は症状が似ていることもあります。
③ 痛風・偽痛風
「昨日までは何ともなかったのに、突然膝が強く腫れて痛くなった」
という場合には、痛風や偽痛風などの結晶誘発性関節炎も考えます。
痛風では尿酸の結晶、偽痛風では主にピロリン酸カルシウムの結晶が関節内に炎症を引き起こします。
偽痛風は特に高齢者の膝に起こることがあり、
- 突然強く腫れる
- 熱をもつ
- 強い痛みが出る
- 曲げ伸ばしが難しくなる
といった症状がみられます。
問題は、こうした症状が感染性関節炎と非常によく似ていることです。
見た目だけでは判断できないこともあり、必要に応じて関節液を採取して調べます。
④ 感染性関節炎 ― 見逃したくない原因
膝が急に腫れたときに、整形外科医が特に見逃したくない病気の一つが感染性関節炎(化膿性関節炎)です。
細菌などが関節内に入り、強い炎症を起こす病気です。
感染性関節炎では、
- 急に膝が腫れる
- 強い痛みがある
- 膝が熱をもつ
- 皮膚が赤くなる
- 曲げ伸ばしが非常につらい
- 発熱する
などの症状を伴うことがあります。
ただし、発熱がないから感染を完全に否定できるわけではありません。
感染性関節炎は治療が遅れると関節軟骨が損傷し、関節機能に重大な影響を残すことがあります。
膝が急に大きく腫れ、強い熱感や発赤、強い痛みがある場合には、自己判断で長く様子をみず、早めに医療機関を受診してください。
⑤ 関節リウマチなどの炎症性疾患
膝の腫れは、関節リウマチなどの炎症性疾患によって起こることもあります。
関節リウマチでは膝だけではなく、手指や手首など複数の関節に、
- 腫れ
- 痛み
- 朝のこわばり
などがみられることがあります。
「膝だけの問題」と思っていても、全身性の病気が背景にあることもあるため、症状の経過や他の関節の状態も重要です。
⑥ 膝の後ろが腫れる場合はBaker嚢腫のことも
「膝のお皿の周りではなく、膝の後ろが膨らんでいる」
という場合には、Baker嚢腫(ベーカー嚢腫)と呼ばれる状態のことがあります。
膝関節内で関節液が増えると、その液体が膝の後方にある袋状のスペースへたまり、膨らむことがあります。
変形性膝関節症やその他の膝関節内の病気に伴って生じることがあります。
つまりBaker嚢腫だけを治療するのではなく、なぜ膝関節内で関節液が増えているのかを考えることが重要です。
膝が腫れたら「水を抜けば治る」?
膝に多くの関節液がたまっている場合、関節穿刺によって水を抜くことがあります。
水を抜くことで、
- 膝の張りが軽くなる
- 曲げ伸ばししやすくなる
- 痛みが軽くなる
ことがあります。
また、関節液を調べることで、
- 感染がないか
- 痛風・偽痛風の結晶がないか
- 血液がたまっていないか
など、原因を調べる手がかりになることもあります。
ただし、水を抜くこと自体が根本治療とは限りません。
変形性膝関節症などによる炎症が続いていれば、再び関節液が増えることがあります。
「水を抜くとクセになる」というより、水が増える原因が残っているから再びたまると考える方が適切です。
この点については、こちらの記事で詳しく解説しています。
膝の水を抜くとクセになる?関節水腫の原因と治療について詳しく見る
膝が腫れたとき、どんな検査をする?
必要な検査は、腫れ方や症状によって異なります。
代表的には、
- 診察
- レントゲン検査
- 超音波検査
- MRI検査
- 血液検査
- 関節穿刺・関節液検査
などがあります。
例えば、変形性膝関節症を疑う場合にはレントゲンが重要です。
一方、半月板や靱帯の損傷が疑われる場合にはMRIが有用なことがあります。
感染や痛風・偽痛風などが疑われる場合には、関節液を採取して検査することが非常に重要になることがあります。
「膝が腫れたら必ずMRI」というわけではなく、考えられる原因によって必要な検査を選択します。
すぐ受診した方がよい膝の腫れは?
膝が少し腫れている程度で、休むことで徐々に改善する場合には、必ずしも緊急性があるとは限りません。
一方で、次のような症状がある場合には早めの医療機関受診が必要です。
- 膝が急に大きく腫れた
- 膝が赤い、または明らかに熱をもっている
- 強い痛みがある
- 発熱を伴う
- 体重をかけられない
- 膝をほとんど曲げ伸ばしできない
- 大きなけがの後に急に腫れた
- 膝が変形している
特に、明らかな外傷がないのに急に腫れ、熱感や赤み、強い痛みがある場合には感染性関節炎を除外する必要があります。
よくある質問(FAQ)
Q. 膝が腫れているのは、すべて「水がたまっている」ということですか?
いいえ。
関節内に水がたまる関節水腫は膝の腫れの代表的な原因ですが、膝周囲の滑液包炎やBaker嚢腫、皮下組織の腫れなど、関節の外側が腫れている場合もあります。
診察によって「どこが腫れているのか」を確認することが重要です。
Q. 膝の水を抜くとクセになりますか?
水を抜いたことが原因で、膝に水がたまりやすくなるわけではありません。
再び水がたまる場合には、変形性膝関節症などの炎症の原因が残っている可能性があります。
Q. 膝が腫れていますが、痛くなければ放置しても大丈夫ですか?
軽度の腫れで自然に改善する場合もありますが、繰り返し腫れる場合や、原因が分からないまま腫れが続く場合には一度整形外科で評価を受けた方がよいでしょう。
変形性膝関節症など、徐々に進行する病気が背景にあることもあります。
Q. 急に膝が腫れて熱をもっています。変形性膝関節症ですか?
変形性膝関節症でも炎症によって腫れることはあります。
しかし、急激な腫れと強い熱感・発赤・痛みがある場合には、痛風・偽痛風だけでなく感染性関節炎も考える必要があります。
特に感染性関節炎は早期診断・治療が重要なので、自己判断で様子をみない方がよいケースがあります。
Q. 膝が腫れているときは冷やした方がいいですか?
運動や軽い使いすぎの後に腫れた場合には、短期間の安静や冷却によって症状が軽減することがあります。
ただし、腫れの原因によって治療は異なります。
強い痛みや熱感、発赤がある場合や、休んでも改善しない場合には、冷却だけで様子をみ続けず医療機関を受診してください。
まとめ
膝の腫れは非常によくみられる症状ですが、原因は一つではありません。
代表的な原因には、
- 変形性膝関節症
- 半月板・靱帯などの損傷
- 痛風・偽痛風
- 関節リウマチ
- 感染性関節炎
- Baker嚢腫など
があります。
特に重要なのは、
「膝が腫れた=変形性膝関節症」「水を抜けば終わり」と単純に考えないことです。
なぜ腫れているのかによって、必要な検査や治療は大きく異なります。
特に、急激な腫れ、強い痛み、熱感、発赤、発熱、体重をかけられないといった症状がある場合には、早めに医療機関で評価を受けることが重要です。
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参考文献・出典
- Mayo Clinic. Swollen knee – Symptoms and causes.
- Swisher J, Sitton Z, Burbank K, Nelson C. Acute Monoarthritis: Diagnosis in Adults. Am Fam Physician. 2025;111(6):497-506.
- Earwood JS, Walker TR, Sue GJC. Septic Arthritis: Diagnosis and Treatment. Am Fam Physician. 2021;104(6):589-597.
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膝について、
- 「膝が繰り返し腫れる」
- 「膝に水がたまると言われた」
- 「変形性膝関節症と言われたが、今後どうすればよいか分からない」
- 「注射や薬を続けても症状が改善しない」
など、治療方針についてお悩みの方はご相談ください。
この記事は京都ルネス病院人工関節センター長、整形外科専門医・人工関節認定医 藤井嵩が執筆しています。
