立ち上がったときに「ポキッ」。
しゃがんだときに「パキパキ」。
階段を上り下りすると、膝から「ゴリゴリ」「カチッ」と音がする。
こうした膝の音を経験したことがある方は多いと思います。
「軟骨がすり減っているのでは?」
「変形性膝関節症が始まっているのでは?」
と心配して受診される患者さんもいます。
結論から言うと、膝から音がするだけであれば、必ずしも病気とは限りません。
一方で、音とともに痛み、腫れ、引っかかり、膝が抜ける感じ、動かしにくさなどがある場合には、変形性膝関節症や半月板・靱帯などの問題が隠れていることがあります。
今回は、「膝がポキポキ鳴るのはなぜなのか」「どんな場合に整形外科を受診した方がよいのか」を人工関節を専門とする整形外科医の立場から解説します。
この記事でわかること
- 膝がポキポキ・パキパキ鳴る原因
- 音がするだけなら心配しなくてよいのか
- 膝の音と変形性膝関節症の関係
- 痛みや腫れを伴う場合に考えること
- けがをした瞬間の「ポキッ」で注意すべき症状
- 整形外科を受診した方がよいケース
膝がポキポキ・パキパキ鳴るのは珍しいことではありません
膝から音がすること自体は、決して珍しいことではありません。
2025年に報告されたsystematic reviewでは、103研究、3万6000人以上を解析した結果、膝のcrepitus(パキパキ、ゴリゴリなどの音)は一般の人にも多くみられることが報告されています。
推定された頻度は、
- 一般集団:約41%
- 膝に痛みのない人:約36%
- 変形性膝関節症がある人:約81%
でした。
研究間のばらつきが大きく、エビデンスの確実性には限界がありますが、少なくとも「膝から音がする=膝に異常がある」わけではないことが分かります。
膝の音はなぜ鳴る?
膝の音には、いくつかの原因があります。
① 関節内の圧力変化による音
関節を動かしたとき、関節液の圧力が変化して小さな空洞が形成されるなどして、「ポキッ」と音が生じることがあります。
指の関節を鳴らしたときに音がするのと似た現象です。
このような音が時々するだけで、痛みや腫れなどがなければ、通常は大きな問題ではありません。
② 腱などが動くときの音
膝を曲げ伸ばしすると、膝の周囲にある腱などの軟部組織も動きます。
こうした組織が骨の周囲を移動するときに、
「カチッ」
「パキッ」
といった音や感覚が生じることがあります。
これについても、痛みや腫れを伴わなければ問題にならない場合が多くあります。
③ 関節軟骨などの変化による音
一方、関節軟骨などに変化が起こると、膝を動かした際に「ゴリゴリ」「パキパキ」といった音や感覚が生じることがあります。
変形性膝関節症でも、こうしたcrepitusがみられることがあります。
ただし、音だけで変形性膝関節症と診断することはできません。
「膝が鳴る=変形性膝関節症」ではありません
膝がパキパキ鳴ると、
「軟骨がすり減っているのでは?」
と心配になるかもしれません。
確かに、膝の音は変形性膝関節症でもよくみられます。
2025年のsystematic reviewでも、膝のcrepitusとレントゲン上の変形性膝関節症との関連が報告されています。
一方で、膝に痛みのない人でも約3人に1人にcrepitusがみられました。
つまり、
「音がすること」と「治療が必要な変形性膝関節症があること」は別の問題です。
変形性膝関節症では、音だけではなく、
- 歩き始めの膝の痛み
- 階段の上り下りでの痛み
- 立ち上がるときの痛み
- 膝のこわばり
- 腫れ
- 曲げ伸ばししにくい
- O脚などの変形
などを伴うことがあります。
膝の音だけを気にするのではなく、痛みや日常生活への影響があるかどうかを見ることが重要です。
膝の痛みや変形性膝関節症について、症状から治療方法まで全体像を知りたい方はこちらも参考にしてください。
痛みや腫れを伴う場合は意味が変わります
膝が鳴るだけなら、多くの場合それほど心配する必要はありません。
しかし、
- 音と一緒に痛みがある
- 膝が腫れている
- 以前より曲げ伸ばししにくい
- 歩きにくくなった
- 症状が徐々に悪化している
といった場合には、一度整形外科で診察を受けた方がよいでしょう。
原因としては、変形性膝関節症だけでなく、半月板や軟骨、靱帯などさまざまな問題が考えられます。
けがをした瞬間の「ポキッ」は別に考える
日常生活で膝を曲げたときに時々「ポキッ」と鳴る場合と、スポーツや転倒などの際に突然大きな「ポキッ」という音がした場合は、意味が異なります。
例えば、
- 急に方向転換した
- ジャンプから着地した
- 転倒した
- 膝を強くひねった
ときに明らかな「ポキッ」という音や断裂感があり、その後に、
- 膝が急に腫れてきた
- 体重をかけにくい
- 膝がガクッと抜ける
- 曲げ伸ばしできない
といった症状がある場合には注意が必要です。
前十字靱帯(ACL)などの靱帯損傷や、半月板などの損傷を伴っている可能性があります。
このような場合は、「膝が鳴っただけ」と考えず、整形外科で評価を受けることをおすすめします。
「引っかかる」「ロックする」は重要な症状
もう一つ注意したいのが、
- 膝が引っかかる
- 途中で動かなくなる
- 膝を伸ばせなくなる
- 膝がガクッと抜ける
といった症状です。
単純に音がするだけの膝とは意味が異なります。
特に、膝が物理的に引っかかって曲げ伸ばしできなくなる状態を「ロッキング」と呼ぶことがあります。
半月板損傷などによって起こることがあり、診察や必要に応じた画像検査が必要になります。
音だけなら、レントゲンやMRIを撮るべき?
痛みや腫れがなく、日常生活にも全く支障がなく、時々膝から音がするだけであれば、音だけを理由に必ずしもMRIなどの精密検査が必要になるわけではありません。
一方で、
- 痛みが続いている
- 腫れを繰り返す
- 膝が動かしにくい
- ロッキングがある
- 外傷後から症状が続いている
場合には、診察の結果に応じてレントゲンやMRIなどを検討することがあります。
大切なのは、「音がするかどうか」だけで検査を決めるのではなく、症状と診察所見を合わせて判断することです。
膝の音をなくすために治療は必要?
痛みや機能障害がなく、単に音がするだけであれば、音そのものを消すために治療する必要は通常ありません。
また、
「膝が鳴るから軟骨が削れている」と考えて、膝を動かさないようにする必要もありません。
膝に痛みがなければ、日常生活や適切な運動を過度に制限する必要はありません。
ただし、音とともに痛みがある場合には、音を治療するのではなく、なぜ痛みが出ているのかを調べることが重要です。
変形性膝関節症が進んだら、すぐ人工関節になる?
膝の音があるからといって人工関節手術が必要になるわけではありません。
また、変形性膝関節症と診断された場合でも、まず症状や変形の程度に応じて保存治療などを検討します。
保存治療を行っても強い痛みや機能障害が続き、日常生活に大きな支障がある場合には、人工膝関節手術が選択肢となることがあります。
人工膝関節にも、膝全体を置き換えるTKAと、傷んだ部分だけを置き換えるUKAがあります。
TKA(人工膝関節全置換術)とUKA(部分人工膝関節置換術)の違いを詳しく見る
どんなときに整形外科を受診した方がいい?
膝から音がする場合でも、次のような症状があれば整形外科で一度確認することをおすすめします。
- 痛みを伴う
- 膝が腫れている
- 曲げ伸ばししにくい
- 膝が引っかかる、ロックする
- 膝がガクッと抜ける
- 外傷時に大きな「ポキッ」という音がした
- 外傷後に体重をかけにくい
- 症状が徐々に悪化している
反対に、
痛みも腫れもなく、昔から時々膝がパキパキ鳴るだけ
という場合には、過度に心配する必要はないことが多いです。
よくある質問(FAQ)
Q. 膝がパキパキ鳴ると軟骨が減っていますか?
必ずしもそうではありません。
膝の音は、痛みのない人にもよくみられます。一方で変形性膝関節症でもcrepitusが多くみられるため、音だけではなく、痛み、腫れ、こわばり、動かしにくさなどを合わせて判断する必要があります。
Q. 膝を曲げるたびに音がします。放置して大丈夫ですか?
痛みや腫れがなく、日常生活にも支障がない場合には、音だけで大きな問題があるとは限りません。
ただし、新しく音が出始めた場合や、痛み・腫れ・引っかかりなどを伴う場合には、一度整形外科で相談するとよいでしょう。
Q. スクワットをすると膝がパキパキ鳴ります。続けても大丈夫ですか?
音だけで痛みがなければ、音がするという理由だけで運動を中止する必要は通常ありません。
ただし、スクワット中に痛みが出る、膝が腫れる、症状が徐々に悪化する場合には、負荷やフォームを見直し、必要に応じて診察を受けてください。
Q. 膝のポキポキ音は将来の変形性膝関節症のサインですか?
膝のcrepitusと変形性膝関節症との関連を示す研究はあります。
一方で、音は膝に痛みのない人にもよくみられます。
したがって、膝が鳴るだけで「将来必ず変形性膝関節症になる」と考えることはできません。
体重管理や適度な運動など、膝の健康を保つ一般的な対策を続けることが重要です。
Q. 「ポキッ」と音がしてから膝が腫れてきました。様子を見てもいいですか?
外傷時にはっきりした「ポキッ」という音や感覚があり、その後に急な腫れ、痛み、不安定感、体重をかけにくいなどの症状が出た場合には、靱帯や半月板などの損傷を伴っている可能性があります。
早めに整形外科を受診することをおすすめします。
まとめ
膝の「ポキッ」「パキパキ」「カチッ」といった音は非常によくみられます。
痛みや腫れなどを伴わず、時々音が鳴るだけであれば、通常はそれほど心配する必要はありません。
一方で、
- 痛み
- 腫れ
- こわばり
- 引っかかり
- ロッキング
- 膝が抜ける感じ
- 外傷後の急な症状
を伴う場合には意味が変わります。
大切なのは「膝が鳴るかどうか」ではなく、「音以外の症状を伴っているかどうか」です。
膝の音が気になる場合でも、音そのものを治療するのではなく、必要であれば膝全体の状態を評価して原因を考えることが重要です。
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参考文献・出典
- UT Health San Antonio. Why does my knee crack or pop? Should I be worried? 2026.
- Couch JL, King MG, De Oliveira Silva D, et al. Noisy knees – knee crepitus prevalence and association with structural pathology: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2025;59(2):126-132. doi:10.1136/bjsports-2024-108866.
- Lo GH, Strayhorn MT, Driban JB, et al. Subjective Crepitus as a Risk Factor for Incident Symptomatic Knee Osteoarthritis: Data From the Osteoarthritis Initiative. Arthritis Care Res (Hoboken). 2018;70(1):53-60.
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膝の痛みについて、
- 「膝の音と一緒に痛みが出る」
- 「変形性膝関節症と言われたが、今後どうすればよいか分からない」
- 「注射や薬を続けても痛みが改善しない」
- 「人工膝関節手術を考える段階なのか知りたい」
など、治療方針についてお悩みの方はご相談ください。
この記事は京都ルネス病院人工関節センター長、整形外科専門医・人工関節認定医 藤井嵩が執筆しています。
