この記事でわかること
- 人工股関節(THA)・人工膝関節(TKA/UKA)の保険適応の有無
- 手術にかかる総医療費の目安と自己負担額の目安
- 高額療養費制度・限度額認定制度のしくみと活用ポイント
- 負担額が変わる条件(年齢・所得・入院日数・差額ベッド料・改定)と注意点
人工関節手術は保険適応?
日本では、人工股関節置換術(THA)および人工膝関節置換術(TKA/UKA)は、いずれも公的医療保険の対象となる医療行為です。
つまり、通常の診療報酬制度の下で手術および入院治療が行われ、差額ベッド代や有床差額・個室料などの部分を除いて保険適用となります。
手術にかかる費用の目安
以下は、標準的な入院期間・合併症がないケースを想定した目安です。実際の金額は医療機関・入院日数・合併症の有無などによって大きく異なります。差額ベッド代などの自由診療費用は別途必要です。
| 手術部位 | 総医療費の目安 | 3割負担の目安自己負担額* |
|---|---|---|
| 人工股関節(THA)片側 | 約200万円 前後 | 約50〜70万円 |
| 人工膝関節(TKA)片側 | 約200万円前後 | 約50〜70万円 |
*上記は自己負担割合が3割の場合の目安です。年齢・所得・高額療養費制度適用によって実際の支払額は異なります。
高額療養費制度・限度額適用認定制度の活用
高額な医療費がかかった場合、健康保険加入者には高額療養費制度があり、所得・年齢に応じて1ヶ月あたりの自己負担限度額が設定されています。
たとえば、ある医療機関で200〜250万円の医療費がかかった場合でも、年収や保険種別によっては自己負担が10万円台になるケースも報告されています。
また、事前に 限度額適用認定証を取得しておくことで、窓口での支払いを限度額までに抑えることが可能な場合もあります。
負担額が変わる条件と注意点
- 年齢・負担割合:70歳未満では自己負担3割が一般的、75歳以上では1割負担のケースもあります。
- 所得・年収:高所得の場合、自己負担の限度額がより高く設定される区分があります。
- 入院日数・合併症:長期入院・合併症対応があると医療費が増加し、自己負担額も増える可能性があります。
- 差額ベッド料・自由診療費:個室料など保険対象外の費用は自己負担となり、上記目安には含まれていません。
- 制度改定・保険負担割合の変更:窓口負担割合や高額療養費制度の限度額は、法改正や財政状況によって変更される可能性があります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「200万円かかったら自己負担も200万円になりますか?」
A1. いいえ。保険適用により窓口負担は通常1〜3割、さらに高額療養費制度の適用があれば自己負担限度額を超える分が払い戻される可能性があり、実質自己負担は10万円前後になることもあります。
Q2. 「個室に入ったらもっと高くなりますか?」
A2. はい。差額ベッド代や特別療養環境室料は保険適用外です。そのため、個室利用や自由診療サービスの追加により自己負担が増える可能性があります。
Q3. 「両足を同時に手術したいのですが、費用は倍になりますか?」
A3. 両側同時手術の場合、総医療費は単側+αとなるため、自己負担額の目安も増えます。保険適用・高額療養費制度の適用対象となりますので、事前に入院施設へ確認が必要です。
まとめ
人工関節手術は保険適用の医療行為であり、通常は自己負担数十万円~数百万円という金額が提示されますが、本国の高額療養費制度の活用により、支払額を大幅に抑えられることがほとんどです。
ただし、年齢・所得・入院日数・差額ベッド料・制度改定などによって実際の負担額は変わります。手術を検討される際には、入院先病院の「費用シミュレーション」を事前に確認されることをおすすめします。
当センターには福知山市を拠点に、北近畿エリア(綾部市・京丹後市・宮津市・与謝野町・舞鶴市・豊岡市・養父市・朝来市・丹波市)からも多数ご来院いただいています。
この記事は京都ルネス病院人工関節センター センター長、整形外科専門医・人工関節認定医 藤井嵩が執筆しています。

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