この記事でわかること
- 人工関節の「摩耗」とは何か?
- 従来のポリエチレンで起きていた問題
- 最新の改良型ポリエチレンの特徴と効果
- 長期成績から見た「安心できる理由」
目次
人工関節の摩耗とは?
人工膝関節や人工股関節では、金属とポリエチレンが接触して関節運動を支えています。このポリエチレンの摩耗は、昔から人工関節の長期耐久性を左右する大きな課題でした。
摩耗によって発生した微細な「摩耗粉」が体内で炎症を起こし、骨を溶かす(骨融解)原因となり、ゆるみや再手術につながることがありました。
昔のポリエチレンでの問題
- 従来型では、10〜15年で摩耗が目立つ例が少なくありませんでした。
- 特に若年者や活動性の高い患者さんでは、再置換が必要になるリスクが問題視されていました。
改良型ポリエチレン(Highly Cross-Linked Polyethylene:HXLPE)
2000年代以降、ポリエチレンは大きく進化しました。特に高分子架橋処理(Highly Cross-Linked Polyethylene, HXLPE)によって摩耗量が大幅に減少しています。
特徴:
- 従来型に比べ摩耗率は大きく低減
- 酸化防止処理(ビタミンE添加など)により、長期使用でも劣化しにくい
- 20年以上の臨床追跡で良好な耐久性が報告
今は安心できる時代に
最新の人工関節に使われるポリエチレンは、かつて大きな課題だった「摩耗問題」が大きく改善されています。特に、
- 摩耗量の劇的な低下
- 長期臨床での信頼性
- 再置換率の減少
といった成果により、患者さんにとって「人工関節は安心して長く使える治療」といえる時代になっています。
まとめ
- 人工関節の課題だった「ポリエチレン摩耗」は、現在では大きく改善。
- HXLPEの導入で摩耗率は従来の10分の1程度に低減。
- 20年以上のエビデンスからも「安心できる材料」となっています。
人工関節手術をご検討の方も、過去に聞いた「すぐに摩耗するのでは?」という心配はほとんど不要です。当センターでも改良されたポリエチレンを用いた人工関節を採用し、長く快適な生活を支援しています。
当センターには福知山市を拠点に、北近畿エリア(綾部市・京丹後市・宮津市・与謝野町・舞鶴市・豊岡市・養父市・朝来市・丹波市)からも多数ご来院いただいています。
この記事は京都ルネス病院人工関節センター センター長、整形外科専門医・人工関節認定医 藤井嵩が執筆しています。

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