この記事でわかること
- UKA(人工膝関単顆置換術)の歴史と成績が良くなかった時代
- 改良が進み現在の成績はどうなっているのか
- TKA(全置換術)との違いと比較データ
- 術者の経験数(ボリューム)が成績に与える影響
UKAの歴史
人工膝関節置換術の歴史を振り返ると、実は全置換術(TKA)よりも先にUKAの概念が登場しました。
初期(1960〜1970年代)
Marmor modular knee、Geomedic kneeなどが米国や日本でも使用されましたが、10年生存率は70%前後と低く、「成績が安定しない手術」と評価されていました。
再評価の時代(1980〜1990年代)
1970年代半ばに英国のGoodfellowとO’Connorが開発したOxford knee(モバイルベアリング型)が登場。広い接触面積を確保し、摩耗を抑える設計が高く評価されました。その後1990年代以降は固定型UKAも改良され、器具や術式の進化により正確な設置が可能となりました。
この頃からUKAの長期成績が大幅に改善し、報告によっては10年で95%以上の生存率を示す研究も出てきました。
日本での臨床
日本でも多数の報告で長期成績が安定していることが報告されています。
現在のUKA:TKA(人工膝関全置換術)との比較
では現代において、UKAとTKAはどのように比較されるのでしょうか。


機能と回復
BMJ 2019のシステマティックレビューでは、UKAの方が術後の機能・痛み・在院日数で優れるとされました。ただし再手術率はTKAが低い点は一貫しています。(ただし、このデータには体重や変形の度合い、術者の技量などは考慮されておりません。)
合併症と死亡率
Lancet 2014の英国NJR10万例超の解析では、UKAは周術期合併症・死亡率がTKAより低いが、再置換は高いと報告されました。(ただし、このデータには体重や変形の度合い、年齢、執刀医の経験数などの技量などは考慮されておりません。)
レジストリデータ
国際レジストリのまとめでは、10年累積再置換率:UKA 10〜15%前後、TKA 5〜7%前後とされていますObermayr 2024。
成績改善の理由
- 適応の最適化:内側OAの骨対骨、靭帯温存例など厳格な診断で良好な成績
- 術者ボリューム:年間10例以上・使用率20%以上の術者ではリビジョン率が半減
- セメントレスUKA:10年成績でセメント固定より優位との報告あり
FAQ(よくある質問)
Q1. 昔は成績が悪かったのですか?
A1. はい。1980年代までは10年生存率70%前後と不良でしたが、Oxford型などの改良により現在は10年で95%以上という報告もあります。
Q2. UKAは誰でも受けられますか?
A2. 内側または外側の限局OA、靭帯温存、変形がコントロールできる症例が適応です。全体に進行したOAにはTKAが推奨されます。
Q3. ロボティックUKAはどのくらい効果的ですか?
A3. 長期データはまだ途上です。
まとめ
- UKAは1960年代に登場し、1980年代には一度「成績不良」の評価を受けた。
- Oxford型や固定型UKAの改良により、現在はTKAに匹敵する長期成績を示す。
- TKAと比べると、回復・機能・合併症ではUKAが有利、再手術率ではTKAが有利という傾向。
- 成績改善には適応の正確な見極めと経験豊富な術者が不可欠。
参考文献
- Wilson H A, Middleton R, Abram S G F, Smith S, Alvand A, Jackson W F et al. Patient relevant outcomes of unicompartmental versus total knee replacement: systematic review and meta-analysisBMJ 2019; 364 :l352 doi:10.1136/bmj.l352
- Insall J, Aglietti P. J Bone Joint Surg Am. 1980;62(8):1329-1337.
- Marmor L. Clin Orthop Relat Res. 1988;(226):14-20.
- Murray DW, Goodfellow JW, O’Connor JJ. J Bone Joint Surg Br. 1998;80-B(6):983-989.
- Argenson JN, et al. J Bone Joint Surg Am. 2002;84(12):2235-2239.
- Wilson HA, et al. BMJ. 2019;364:l352.
- Liddle AD, et al. Lancet. 2014;384:1437-45.
- Obermayr S, et al. Arch Orthop Trauma Surg. 2024.
- Badawy M, et al. Acta Orthop. 2014;85:342-47.
- Sun Y, et al. BMC Musculoskelet Disord. 2021.
- Mohammad HR, et al. J Bone Joint Surg Am. 2024.
当センターには福知山市を拠点に、北近畿エリア(綾部市・京丹後市・宮津市・与謝野町・舞鶴市・豊岡市・養父市・朝来市・丹波市)からも多数ご来院いただいています。
この記事は京都ルネス病院人工関節センター センター長、整形外科専門医・人工関節認定医 藤井嵩が執筆しています。

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