人工股関節手術(THA)後の脱臼とは?
なぜ脱臼が起こるのか?
脱臼しやすい動きと予防方法
当院の手術方式(ALSアプローチ)で脱臼リスクを減らす理由
よくある患者さんの声
「脱臼が怖くて、日常生活が不安です…」
「どんな動きで脱臼するんですか?」
「一度脱臼するとクセになるって本当?」
脱臼とは?なぜ起こる?
人工股関節では、本来の股関節と同じように、丸い大腿骨頭(ボール)と骨盤側の臼蓋(ソケット)を人工的に置き換えます。
脱臼とは、このボールがソケットから外れてしまう状態です。
一般的に脱臼しやすいとされている時期・動作
- 特に注意が必要なのは術後3ヶ月以内
筋力や靱帯の回復が不十分な時期は不安定になりやすいです。 - 注意すべき動作の例(後方アプローチの場合)
- 深く腰をかがめて物を取る
- 和式トイレの使用
- ソファに深く座ってから身体をひねる
- ※ALSアプローチなど、前外側からの手術法では後方脱臼が起こりにくいとされています。
当院のこだわり:脱臼リスクを抑える術式
当センターでは、仰臥位で行う**ALSアプローチ(前外側アプローチ)**を標準術式としています。
- ✅ 筋肉を切らずに手術ができる
- ✅ 後方の関節包を温存しやすい
- ✅ 脱臼のリスクが低く(当センターでは2025年7月現在術後脱臼はゼロです)、リハビリの制限も少ない
その結果、術後早期から安心して動けることが多く、「脱臼が怖くて動けない…」という不安を軽減することができます。
一度脱臼するとクセになる?
一度でも脱臼を起こすと、その後のリスクは確かに高くなります。脱臼そのものは整復(元に戻す処置)で治ることが多いのですが、繰り返すと人工関節の部品(特にポリエチレンというクッション材)が傷つき、摩耗(すり減り)が早くなることが分かっています。そのように、人工関節の部品が長い年月で大きくすり減ってしまうと、関節が不安定になり、遅れて脱臼が起きやすくなることもあります。
つまり「脱臼」と「摩耗」はお互いに関連しており、放っておくと再手術につながる可能性もあるため注意が必要です。
当センターでは、手術後に定期的なレントゲン検査を行い、部品のすり減りや緩みがないかを確認しています。脱臼を起こしてしまった場合も、必要に応じて詳しい検査や再手術のタイミングを検討し、患者さんにとって最も安全で安心できる治療を提供いたします。
そのため、脱臼させないような丁寧な手術方法が重要となります。
📝 まとめ
- 脱臼は人工股関節術後に起こる可能性がある合併症の一つ
- 術式やアプローチによってリスクは大きく変わる
- 当院のALSアプローチでは脱臼リスクを低減し(2025年7月時点でゼロ)、術後早期から安心して生活できることを目指しています
- 不安な方は、術前に遠慮なくご相談ください
🏥 ご相談・診療について
当センターでは、脱臼しにくい術式と丁寧な術後指導により、安心して人工股関節手術を受けていただける体制を整えています。
「過去に脱臼を経験したことがある」「生活で不安がある」という方もお気軽にご相談ください。
当センターには福知山市を拠点に、北近畿エリア(綾部市・京丹後市・宮津市・与謝野町・舞鶴市・豊岡市・養父市・朝来市・丹波市)からも多数ご来院いただいています。
この記事は京都ルネス病院人工関節センター センター長、整形外科専門医・人工関節認定医 藤井嵩が執筆しています。
参考文献・出典
- Mallory TH, Lombardi AV Jr, Fada RA, Herrington SM, Eberle RW. Dislocation after total hip arthroplasty using the anterolateral abductor‑split approach. Clin Orthop Relat Res. 1999 Jan;(358):166-72.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9973988/ - Angerame MR, et al. Surgical approaches for total hip arthroplasty. Ann Joint. 2018;3:43. Review article discussing complications including dislocation profiles of various approaches.
https://aoj.amegroups.org/article/view/4343

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